
坂田滋久はリフトを見ると思い出す。

新入生の親睦を図る目的もあったにちがいない。 日帰りハイキングなのに飯盒と食糧を持参してる生徒もいた。 3年間なぜか同じクラスになるとは当日まったく想像もしなかった 。

いまにして思えば、 高尾山や陣馬山などは下山の道筋がいくつもあるのだから、 何か不測の事態が生じても飯盒で飯を炊く余裕があれば空腹のまま 下山したほうがいいような気がする。

それはそうと1学期の終わりに林間学校が組まれてオリエンテーリ ングをさせられた。 地図を頼りに山でポイントをいくつか踏破して制限時間内にゴール を目指す、たわいないゲームだ。 志賀高原のスキー場だったと記憶する。

夏だけどリフトが動いていた。 春の遠足はリフトを使うも使わないも自由だった。 ましてやオリエンテーリング、 その場の状況を臨機応変に利用していいに違いない。 ポイントを踏破して、条件をクリアした後、 リフト乗り場でおじさんに「乗れますか?」と尋ねたら「ああ、 いいよ!」というのでリフトを利用して楽しくゴールした。

夕食の前に先生が「みなさんにお話があります。きょう、 当校が始まって以来のとんでもないことをした生徒がいます」…… へー、そんな悪い生徒がいるんだ。誰だろう? 「オリエンテーリングでリフトを使ってゴールした生徒がいます。 誰とはいいませんが、 このような不正を繰り返すことのないようにしてください」

まさか自分のことだとは思わなかった。下向いてやりすごした。 それ以来、リフトを見ると乗ってよいものかどうか躊躇する。 だが乗る。